鹿児島県内で事業を営んでいらっしゃる経営者の皆様、そしてそのご家族、従業員の皆様へ。
芝原総合法律事務所です。今回は、鹿児島県においても喫緊の課題となっている「会社の後継者問題」について、法的視点も交えながら考えていきたいと思います。
豊かな自然と独自の文化を持つ鹿児島県。その活力を支えているのは、地域に根差した数多くの中小企業です。しかし今、多くの企業が経営者の高齢化や後継者不在という深刻な問題に直面しています。帝国データバンクの調査によると、全国的にも後継者不在率は依然として高く、地域経済の担い手である中小企業の存続が危ぶまれる状況は、ここ鹿児島県も例外ではありません。
後継者が見つからないまま廃業を選択せざるを得なくなると、長年培ってきた技術やノウハウが失われるだけでなく、地域の雇用喪失や経済活力の低下にも繋がってしまいます。これは、個々の企業の問題にとどまらず、鹿児島県全体の未来に関わる重要な課題です。
なぜ後継者問題は起こるのか?
後継者問題が発生する背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。
- 親族内に適任者がいない・継ぐ意思がない: 少子化や価値観の変化により、子どもが家業を継がないケースが増えています。また、都市部への人口流出も、地方における後継者候補の減少に拍車をかけています。
- 従業員の中に引き受け手がいない: 有能な従業員がいても、経営者としてのリスク(借入金の個人保証、経営責任など)を負うことへのためらいや、株式取得のための資金調達の難しさから、承継を断念するケースがあります。
- M&A(第三者承継)への抵抗感: 長年手塩にかけて育ててきた会社を、全く知らない第三者に譲ることに心理的な抵抗を感じる経営者は少なくありません。また、M&Aに関する知識不足や、適切な相談相手がいないことも障壁となります。
- 事業の将来性や負担への懸念: 引き継ぐ側から見て、事業の将来性が見通せない、あるいは過大な借入金や個人保証を引き継ぐことに不安を感じる場合もあります。
後継者問題への法的アプローチと対策
後継者問題を解決し、大切な会社を次世代へ円滑に引き継ぐためには、早期からの準備と専門家を交えた検討が不可欠です。
- 早期の準備開始:
- 現状把握と課題整理: まずは自社の経営状況、強み・弱み、そして後継者に関する課題を客観的に把握することが重要です。
- 後継者候補の育成・選定: 親族、従業員、第三者など、誰に引き継ぐ可能性があるのかを早期に検討し、必要な場合は育成計画を立てます。
- 事業承継計画の策定: いつ、誰に、どのように事業を引き継ぐのか、具体的な計画を立てます。これには、株式の承継方法、資金計画、経営体制の移行なども含まれます。
- 承継方法の選択:
- 親族内承継: 最も心情的に受け入れられやすい方法ですが、相続人間でのトラブルを避けるための準備(遺言作成、生前贈与、株式の集約など)や、後継者の経営能力育成が必要です。相続税対策も重要なポイントとなります。
- 従業員承継(MBO/EBO): 会社の理念や文化を理解している従業員への承継は、スムーズな移行が期待できます。しかし、株式買取資金の確保や、経営権の安定化、他の従業員との関係性などが課題となります。
- 第三者承継(M&A): 親族や従業員に適任者がいない場合の有効な選択肢です。より良い条件で会社を存続させられる可能性がありますが、適切な相手探し、企業価値の正当な評価、秘密保持、複雑な法的手続き(デューデリジェンス、契約交渉など)が伴います。
- 法的サポートの重要性:
事業承継は、単に経営権を引き継ぐだけでなく、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割といった法的手続きが伴います。また、相続、税務、労務など、多岐にわたる法的な知識が不可欠です。
- 各種契約書の作成・レビュー: 株式譲渡契約書、事業譲渡契約書など、将来のトラブルを防ぐための適切な契約書作成が重要です。
- 法的手続きの実行: 登記変更手続きなどを正確に行う必要があります。
- 相続対策: 遺言書の作成、遺留分対策、生前贈与の活用など、円満な相続を実現するためのサポートを行います。
- 個人保証の解除・見直し交渉: 後継者の負担を軽減するため、金融機関との交渉をサポートします。
鹿児島県における支援
鹿児島県や鹿児島県事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所、金融機関などでは、事業承継に関する相談窓口やセミナー、専門家派遣などの支援策を提供しています。こうした公的な支援制度を積極的に活用することも有効な手段です。
おわりに
会社の後継者問題は、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、早期に問題意識を持ち、計画的に準備を進めることで、必ず道は開けます。何よりも重要なのは、「まだ先のこと」と考えず、経営が順調なうちから対策を検討し始めることです。
芝原総合法律事務所では、弁護士・司法書士が在籍しており、事業承継に関する法的な課題に対し、経営者の皆様の想いに寄り添いながら、最適な解決策をご提案いたします。事業承継計画の策定支援から、具体的な法的手続き、関係者との交渉、相続対策まで、法的な側面から総合的にサポートいたします。また、税務や会計に関する課題については、必要に応じて信頼できる税理士や公認会計士等の専門家と緊密に連携し、問題解決にあたります。
「何から手をつければ良いかわからない」「誰に相談すれば良いか迷っている」といった段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の大切な会社と、鹿児島県の未来を次世代へ繋ぐため、私たちが全力でサポートいたします。